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2013年12月25日 IP情報

亀田製菓VS宮田:柿の種パッケージ訴訟

弁理士 田口 健児

【ご質問】

お客様から下記のような質問をいただきました。

「亀田製菓「柿の種ピーナッツ入り6袋入り」差し止め訴訟について2012年9月に、亀田製菓が、自社商品「柿の種ピーナッツ入り6袋入り」にパッケージが類似しているとして、その商品の製造販売元(株式会社宮田等)に対し、差し止め訴訟を行っております。この類似パッケージでの訴訟に関しての、訴訟ポイント等について、解説をお願いいたします。」

 

一番上が亀田製菓の柿の種、二番目が宮田の警告受領前の柿の種、三番目が宮田の警告受領後の柿の種です。

亀田

 宮田前 宮田後

  1. 1. 経緯

1966 年      亀田製菓が「ピーナッツ入り柿の種」を発売

1977 年      亀田製菓が6分包の個装を大袋に詰めた「フレッシュパック柿の種」を発売

           その後、商品名を「230g 亀田の柿の種 6 袋詰」に変更し現在まで製造・販売

1994 年      亀田製菓が現在の配色を基調としたパッケージデザインを採用

2005 年      亀田製菓がそれに基づいた現在のデザインを採用

2011年9月    「柿の種ピーナッツ」を株式会社宮田が企画・販売し、レスペ株式会社が製造

           亀田製菓が登録商標を付したパッケージについて宮田に警告

           宮田が謝罪し、デザインを変更しそれを亀田製菓に見せた上で出荷すると約束

           宮田が亀田製菓に見せずに登録商標を除いたオレンジのパッケージを出荷

           亀田製菓が警告書を発送

           宮田は違法性を認めずデザイン変更に8月かかると回答

           亀田製菓が交渉を打ち切り、提訴準備を開始

           宮田がデザイン案を送付するも、発売中のパッケージの違法性は否定し、

           販売中止要請を拒絶

2012年9月19日 株式会社宮田及びレスペ株式会社に対して、訴訟を提起

 

  1. 2. 訴訟内容

(1) 請求内容

不正競争防止法等に基づく相手方製品の販売の差止請求及び損害賠償請求

(2) 損害賠償請求金額

金1,000万円及びこれに対する遅延損害金

 

  1. 3. 和解内容

(1) 株式会社宮田及びレスペ株式会社は、相手方製品を納入していた取引先並びにその子会社及び関連会社に対し、

2013年6月13日から1年間、包装のデザイン如何を問わず、柿の種製品を販売しない

(2) 株式会社宮田及びレスペ株式会社は、今後は相手方製品(旧包装及び現包装の製品)をいずれの者にも販売しない

(3) 株式会社宮田及びレスペ株式会社は、相手方製品の旧包装及び現包装の在庫品及び在庫包装をすべて廃棄する

 

  1. 4. 訴訟ポイント

 請求内容からは、少しトーンダウンした和解内容だと思います。

その理由として、

(1)商標権侵害として訴訟を起こせなかったこと、

(2)裁判でパッケージが類似すると認めさせるのが困難であったこと、

(3) パッケージの類似だけでは、相手製品の売上高に対する寄与度が高くならない可能性があったこと、

が考えられます。

 

(1) 商標権侵害として訴訟を起こせなかったこと

 商標「柿の種」は、浪速屋が登録し更新しなかったため登録抹消となり、普通名称化した商標です。このため、亀田製菓は、「柿の種」に関する登録商標を有していません。商品「菓子及びパン」について、オレンジを基調とし青いリボンを付加した包装を表した登録商標第3270881号を有していますが、現在使用している包装と社会通念上同一と言い難いものです。

 ピーナッツと柿の種をアレンジした登録商標第4991188号を有しており、これは相手方の旧パッケージに使用されていましたが、現パッケージから除かれています。

 そのため、商標権侵害を主張することが困難であったものと思われます。

 

(2) 裁判でパッケージが類似すると認めさせるのが困難であったこと

 亀田製菓は、商標権侵害での訴訟提起が困難であったため、不正競争防止法で訴訟提起しています。最終的に和解となったため、訴状の内容が不明ですが、不正競争防止法2条1項か2項で提訴したものと思われます。

 簡単に言いますと、1項の要件は周知の商品等表示(包装)と類似し混同を生じさせること、2項は著名の商品等表示(包装)と類似すること、です。

 商標ではなく、パッケージを周知または著名と立証することは、困難であったと思います。

 また、1項2項共に、類似が要件となりますが、赤字の「柿の種」、オレンジの背景色、赤の縁取りでは、印象としては似た感じがありますが、商標登録といった明確な権利なしに、類似の包装とまで認定させるのが困難であったのではないでしょうか。

 

(3) パッケージの類似だけでは、相手製品の売上高に対する寄与度が高くならない可能性があったこと

「白い恋人」VS「面白い恋人」の訴訟でも、最終的に和解となりましたが、損害額の賠償はありませんでした。

 

和解になったため、詳しい交渉内容は分かりませんが、判決が出た場合には

包装のみの類似による損害賠償額を高く認定させることが困難であった可能性もあります。

 

  1. 5. 包装に関する権利保護のポイント

(1) 権利化

 まずは、出所識別機能を有する文字や図形の商標の登録を目指します。今回もイラストの登録商標が有効でした。文字や図形の商標の登録が難しい場合、パッケージデザインとして使えるものを商標登録しておきます。

(2) 差止目的

 パッケージデザインの登録商標は、損害賠償よりも差止請求や廃棄処分を目的と割り切った方がよいように思えます。

以上

 

 

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