2022年8月18日 IP情報
弊所の経営理念であります「知恵の資源化を支援し、夢の実現に貢献する」における「知恵の資源化」の成功事例の一つだと思いますので、多くの中小企業、個人発明家の皆様にご覧いただきたい判決であると思料します。
<判決全文>
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/286/091286_hanrei.pdf
主文の内容
本判決は、原審を取り消し、東北自動車道佐野SAの上下各スマートICに関し、NEXCO東日本に対する約2700万円の不法行為による損害賠償請求を認容する内容です。
訴訟の経緯
PXZ社は、NEXCO東日本に対し、東北自動車道佐野SAの上下各スマートICにおいて、PXZ社の保有する車両誘導システムに関する特許権が侵害されていることを理由として、損害賠償を求めて、2019(平成31)年4月1日に東京地方裁判所に提訴していました。東京地方裁判所(原審)は、2020(令和2)年6月11日、原判決においてPXZ社の請求を棄却したため、PXZ社は、控訴し、PXZ社の請求の正当性を主張してまいりました。今般、知的財産高等裁判所は本判決において、原判決を取り消しPXZ社の前述の請求を認容しました。
本判決は、明細書に開示された実施例等に基づき特許発明を限定的に解釈し「非侵害」とした原審の判断を取り消したもので、高速道路のスマートICにおける「逆走」という新たな「不正走行問題」を解決する特許発明を特許請求の範囲に基づいて正当に解釈する妥当なものです。
本判決は車両誘導システムの損害の発生及びその額において、佐野SAスマートICから東北自動車道に出入りする車両を誘導することを発明の「使用による実施」と認め、実施料相当額の算定基礎となる「売上額」を、「高速道路の利用1回に対して課す固定額(ターミナルチャージ)」と「隣のICまで又はICからの通行料」との2本立てで認め、システム発明の製造、販売以外の使用としての売上額算定の多様性を示したものです。
今後もHP上で本判決のポイント毎の解説を追加する予定ですので、ご覧戴けると幸いです。
所長弁理士 田中秀喆