2014年4月17日 IP情報
改正中国商標法が2014年5月1日から施行されます。
主な改正点をご紹介します。
音声商標が登録の対象となることが条文上明記されました。
なお、香り、単一の色彩、動態までは明記されませんでした。
「商標法実施条例(検討稿)」追加可能の内容:
(1)音声標識を商標として出願する場合、音声見本を提出して、且つ願書において声明しなければならない。
(2)五線譜又は数字譜で説明し、且つ文字による説明も付加しなければならない。
(3)五線譜又は数字譜で説明できない場合、文字による説明をしなければならない。
(4)商標の説明が、音声見本と一致しなければならない。
これまでは、区分ごとに商標登録出願しなければなりませんでした。
改正後は、一商標多区分出願ができるようになります。
「商標法実施条例(検討稿)」追加可能の内容:
(1)分割制度の導入:異なる商品、異なる区分において分割商標出願書を提出し、且つ分割費用を納付して、分割後の出願は、元の出願の出願日を留保する。
(2)分割に適用する手続き:部分的拒絶査定、部分的異議申立、譲渡、移転、拒絶不服審判の部分的成立、部分的無効。
馳名商標(ちめいしょうひょう)については、商標局、商標評審委員会、人民法院のみが認定できる旨が明記されました。馳名商標とは、日本で言う著名商標のことです。
第三者が「馳名商標」の表示を商品等に使用することが禁止されました。
違反した場合には、是正命令の後、罰金10万元(約160万円)が課されます。
業務提携等によって、他人の商標が既に使用されていることを明らかに知っていた場合に、冒認出願することを禁止する旨が規定されました。
ここ数年、業務提携の準備段階において、他人の商標を冒認出願する行為が頻発していましたが、これを規制する条文がありませんでした。
商標代理機構は、誠実信用の原則に従って商標手続を行い、かつ秘密保持義務を負うことが明記されました。
また、委託を受けた商標が冒認出願である場合は、委託を受けてはならない義務が規定されました。
なお、商標代理機構とは、委託人の委託を受けて、委託人の名義で商標登録出願若しくはその他の商標に関する事務を取り扱う法律サービス機構をいいます。日本の特許事務所とは異なります。
中国は2003年に商標代理機構と代理人の資格審査制度が廃止されてから、代理機構の数が急増し、現在は商標代理制度を導入した1990年代の20倍にあたる1万7000社に達しています。
商標代理機構は、信用格付けがあるように、玉石混交のようです。
商標局の初期審査公告まで出願受理日から9ヶ月以内との期限が設けられました。
日本では、ファーストアクションまで約5ヶ月なので、9ヶ月は少し長く感じるかもしれませんが、これまでの中国の審査期限と比べるとかなり早くなりました。
しかも、期間を法律で規定するとは驚きです。
中国ではこれまで、意見書を提出する機会なく、いきなり拒絶が確定していました。
改正後は、商標局は、出願人に出願内容について説明又は補正を要求できるようになります。
よって、類似判断などについても説明書等の提出が可能になります。
いわゆる相対的無効理由に基づく異議申立ては、これまでの「何人」ではなく、「先行権利者」または「利害関係人」のみが提起できることになりました。
現在、登録満了日の6月前からできる更新出願が登録満了日の12月前からできるようになります。
これは、日本より6月早いですね。
登録商標を譲渡する場合、商標権者は、同一商品に登録されている類似商標、または、類似商品に登録されている同一または類似商標に対し、一括譲渡しなければならないことが規定されました。
商標の使用は、「商標を商品、商品の包装若しくは容器、及び商品取引書類に付し、或いは、商標を広告宣伝、展示及びその他の商業活動に用い、商品の出所の識別に用いられる行為をいう。」と定義されました。
これにより、商品の出所の識別に用いられなければ、商標の使用と言えず、不使用取消審判で取消されるものと思われます。
登録商標が指定商品の一般名称(普通名称)となった、又は、正当な理由無く継続して三年間使用されなかった場合、如何なる単位または個人も商標局に登録商標の取消申請を行うことができることが規定されました。
現行法では認められていない「先使用権」が、一定の条件の元に認められることになりました。
違法売上が5万元(約80万円)以上の場合、違法売上の5倍以下の罰金を課すことができることとなります。
侵害を訴えられた第三者が、専用使用権者は登録商標を使用していないという抗弁を行った場合、裁判所は、専用使用権者に請求前3年間における登録商標の使用の証拠を提出することを要求することができます。
専用使用権が登録商標の使用と、侵害行為により損失を被ったことを証明できない場合は、第三者は賠償の責任を負いません。
これは、外国の周知商標の登録を受け、実際に使用せず、その外国企業に損害賠償や譲渡費用を請求する商標バイヤー対策の意味合いがあるのかもしれません。
以上